- 2025.11.06
- コラム
寒い家は危険!家庭で起こる死亡事故の実状(2024年版)
厚生労働省人口動態調査結果(2025.9.16発表)をもとに、私たちの暮らしの中に潜む『家庭内の不慮の死亡事故の実状』をお伝えいたします(毎年、最新データにて更新)。
家庭内の事故で亡くなられる方は増え続けている
2023年に家庭内事故で亡くなられた方は16,050名と、2022年の15,763名に比べて101.8%、287名の増加でしたが、2024年は17,320名となり、2023年に比べて107.9%、1,270名の増加と大幅に増えています。

要因別に見ますと「溺死・溺水」で亡くなられる方が2023年に比べて112.0%、831名の増加、「その他」が2023年に比べて134%、609名の増加となっており、特に注目すべき要因であることがわかります。「溺死・溺水」で亡くなられる方は全体の約44.9%となっており、最も大きい要因であることがわかります。
「その他」のなかでは、「自然の過度の高温への曝露」(熱中症など)で亡くなられた方が1,320名で、2023年の907名から413名増えており、「その他」のうち約7割を占めています。また、「自然の過度の低温への曝露」(低体温症や凍死など)は625名で、「過度の高温への暴露」とあわせると1,945名となり、「その他」のうち8割以上が住宅の温熱環境が要因で亡くなられていることがわかります。
家庭内事故で亡くなられる方は交通事故で亡くなられる方の6.5倍
2024年に家庭内事故で亡くなられた方は17,320名で、交通事故で亡くなられた方の6.5倍となっています。

自動車の安全技術の普及や飲酒運転・速度違反対策の強化により、1996年に9,943名だった交通事故の死亡者数は2024年には約4分の1まで減少しました。
一方で、家庭内事故で亡くなられる方は1996年の10,500名から約1.6倍に増加しています。家庭内事故、特に最大要因である「溺死・溺水」(うち約9割が浴室内でのヒートショックと考えられます)への具体的な対策が急務です。
具体的な対策については、下記の記事をご参考ください。
・【対策】「ヒートショック予防のために住宅の断熱化を検討しよう」
寒い時期に増加することからヒートショックと推測される
溺死のうち78.5%が家庭内で起こっていることと、冬季に増加することから浴室内でのヒートショックによるものと考えられます。

2024年においては2月よりも3月の方が死亡者数が増えていますが、2024年3月は上旬~下旬初めにかけて西高東低の冬型の気圧配置となり寒気が流れ込みやすく、寒気の入り込み・寒戻りの影響が比較的大きかったことが影響していると推察されます。
なお、2023年は東日本では統計開始以来の高温、西日本では過去最高タイの高温で、溺死で亡くなられる方は844名と2024年の1,266名に比べて少なく、この点からも外気温が低いことでヒートショックに至りやすくなっていることがわかります。
夏は熱中症対策、冬はヒートショック対策
熱中症で亡くなられる方はコロナ禍を除くと増加しており、2024年には2,160名となりました。そのうち家の中で亡くなられた方は864名で、適切な冷房の使用や家の中に入る日射しを遮るなどの対策が引き続き求められます。
また、浴槽内のヒートショックで亡くなられる方も増加しており、2024年には7,194名と昨年を大きく上回っています。脱衣室・浴室での暖房機器の使用や断熱改修など、温度差を縮めるための対策を、熱中症対策と同じように広く知っていただくことが必要です。

家庭内事故で亡くなられる方は65歳以上が約9割
2024年に家庭内事故で亡くなられた方は、年代別にみると65歳以上の高齢者が全体の88.8%と前年と同じ割合となっています。そのうち「溺死・溺水」で亡くなられた方は65歳以上では7,368名で全体の約48.0%となっており、全年代の約44.9%を上回っています。特に65歳以上の方においては、冬のヒートショックを防ぐ対策を講じていただく必要があります。

※社会課題を定量的にお伝えするために、客観的なデータとして「死亡者数」を利用させていただいたことをご理解ください。家庭内事故、交通事故、悪性新生物、熱中症により亡くなられた方にご冥福をお祈りさせていただくとともに、ご家族の方々にお悔やみ申し上げます。
