2021.10.26
コラム

【シリーズ:廃プラをエネルギーに!①】次世代の水素ホテルとは?(レポート)

使用済みプラスチックからつくられる水素で、電気を発電できることをご存知でしょうか。CO2の排出削減が求められている中、画期的なエネルギーの一つとして注目されています。

このエコなエネルギーを活用しているのが、”水素ホテル”こと「川崎キングスカイフロント東急REIホテル」です。ホテル内の約30%のエネルギーを水素で賄っています。

この「水素ホテル」の取り組みは、実は環境省の実証事業(平成27年度地域連携・低炭素水素技術実証事業)として行われております。

その仕組みは、自治体やホテルで回収された廃プラスチックをもとに、水素製造設備で水素を生成し、ホテルまで引かれたパイプラインで水素を運んだ後、ホテルに設置した燃料電池(水素発電機)によって電気や熱エネルギーに変換される流れです。

そこで今回「水素ホテル」の実態を探るべく、川崎キングスカイフロント東急REIホテルや、水素発電に関わる企業を取材させていただきました。シリーズにて、「水素ホテル」の実態と今後の可能性についてお伝えしていきます。

神奈川県川崎市【 川崎キングスカイフロント東急REIホテル 】

羽田空港対岸の多摩川河川敷にある、環境分野の企業や研究機関が集積する国際戦略拠点・川崎殿町キングスカイフロント地区に、2018年に開業したのが、川崎キングスカイフロント東急REIホテルです。

「水素ホテル」として開業した背景やその反響を、川崎キングスカイフロント東急REIホテル 販売推進部門企画・広告担当 服部未来氏に伺いました。

LLL(ロングライフ・ラボ 以下 LLL)「廃プラスチックから生成した水素で自家発電に取り組もうとした背景や、実証事業においての御社の位置づけを教えてください。」

服部氏「実証事業としてホテルを誘致する案がでており、そこに東急ホテルが手をあげ参画が決まりました。現在も実証事業の協力業者として、他の参加企業様と共に参加している形です。
実証事業期間中である今は、廃プラスチックから生成された水素は国費で賄っておりますが、6年目からは購入予定となっています。また水素で発電する燃料電池にも寿命があるため、今後どのように継続していくのかは、他の参加企業様と話し合っている最中です。せっかく作ったパイプラインやシステムなので、実証事業後も継続して続けられるよう、方法を模索しております。」

LLL「『水素ホテル』としてのお客様の反応はどうですか?」

服部氏「最初は燃料電池がわからず、ご説明しても『そうだったのか』程度でしたが、水素発電を活用したレタス栽培を始めてから、お客様からの注目が高まりました。」

服部氏「レタスは金曜日に収穫して、土日の朝食のバイキングに出しています。水素発電の電気を活用していることを知ってもらために、ポップで説明もしています。お客様の反応もいいですね。最多で100株のレタスを栽培できる仕組みになっており、実際は毎週40株サイクルで収穫しています。」

実証実験の担い手として、しっかりと「水素ホテル」のPRを行っている川崎キングスカイフロント東急REIホテル。宿泊するお客様にも実証事業の取り組みを知ってもらい、関心をもってもらうことを大切にしていることが、服部氏の言葉からも伝わってきました。

また、最近はメディアの取材や学校関係の見学会なども増えているそう。普通の”ホテル”とはまた違った側面で注目されるのはうれしいとおっしゃっていました。今後も「水素ホテル」として一人でも多くの人に、水素発電の取り組みについて知ってもらうきっかけを提供していきたいと意気込む服部氏が印象的でした。

また川崎キングスカイフロント東急REIホテルは、水素発電で30%の電気を賄っていますが、それ以外の70%は完全再生可能エネルギーの電力会社から購入しており、環境配慮も徹底しているとのこと。

他にも、宿泊時にお客様が対象のアメニティーを使用しなかった場合、チェックアウト時に備え付けのグリーンコインを、フロントにお渡しすると森林保全活動などの、地球環境保全の基金となる取り組みも実施しております。

是非一度、川崎キングスカイフロント東急REIホテルに実際に足を運んで、「水素ホテル」を体感してみてはいかがでしょうか。快適にホテルに宿泊しながら、自然と地球環境にも配慮できるのは、宿泊者の目線からもとても素敵な仕組みです。

この水素発電が実証事業の後も継続できるよう、またほかのホテルなどにも広まっていくためには、生活者の認知や支持が必要不可欠だと強く感じました。

次回は、廃プラスチックから水素を生成する流れや、燃料電池の側面から実証事業について詳しくお伝えしていきます。
■「川崎キングスカイフロント東急REIホテル」についてはこちら

<ロングライフ・ジャーナル「”水素ホテル”の取り組み」シリーズ>
■<シリーズ②>廃プラをエネルギーに!ケミカルリサイクル実現性はこちら

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