2022.01.18
コラム

寒い家は危険!家庭で起こる死亡事故の実状(2020年版)

最新の統計データ(厚生労働省人口動態調査結果)をもとに『家庭内の不慮の死亡事故の実状』をお伝えいたします。

 2020年の家庭内の不慮の事故による死亡者数は13,708(前年比-0.7%)で前年とぼぼ同じ、交通事故死亡者数2,839人(前年比-11.7%)と比較すると4.8倍の方が不幸にも家の中で亡くなられています。交通事故死者数は減少傾向が続きますが、家庭内事故死者数に歯止めはかかっていません。参考までに、2020年の新型コロナウィルス感染症による死亡者数は3,466人で家庭内事故の約1/4でした。
 

ところで、家庭でどのような不慮の死亡事故が起きているのでしょうか?
一般的には、『階段やバルコニーから落ちる』『火災』などが多いと思われがちですが、最も多いのは『溺死及び溺水(5,451)』が40%を占めます。そのほとんど(5,037人)が『浴槽内での溺死及び溺水』で命を落されています。
寒い冬、『気温差による急激な血圧上昇降下で意識を失い浴槽内で溺死』、『長くお湯に浸かりのぼせてしまい意識を失い溺水』が多いといわれています。どちらも家の寒さが原因で、広い意味でヒートショックが原因といえます。

年代別に見ると、高齢化するにつれて増加傾向にあり、65歳以上で全体の87%を占めます。どの年代も『溺死及び溺水』が最も多くなっています。 

厚生労働省の人口動態調査結果による『浴槽内での死者数』は5,037人ですが、東京都健康長寿医療センターの研究報告(平成26326日発表)によると、『救急搬送されてその後亡くなられた方や不搬送数を考慮すると年間約17,000人と推計される』と報告されています。
単純に一日あたりに換算すると、47人もの尊い命が奪われているのです。もし交通事故で一日に47(大型バス1台分)の死者が出たらトップニュースになります。もっと家の寒さの危険性についてもメディアで取上げて欲しいものです。 

真夏になると、ニュースで熱中症による健康被害の注意喚起が盛んに行われますが、『家の中での熱中症死者数』と『浴槽内の死者数』と比較すると、8.2倍もの人が浴槽で亡くなられています。この差は凄い!いかに『寒い家が危険』かが分かります。
その推移をみると、地球温暖化の影響で猛暑日が多くなり、熱中症死亡者数はここ数年1,000(住宅内以外も含めた総数)を超えています。温暖化の進行を止めなければ、熱中症死亡者数は更に増加することが懸念されます。浴槽内の死者数は、増加傾向にやや歯止めがかかり2017年以降減少傾向にあります。

家庭内死亡事故死者数が最も多い『浴槽内での溺死及び溺水事故』を減らすため、健康長寿の社会を構築していくためにも、家の寒さ対策がとても重要です。
しかし、エネルギーを浪費しては意味がありません。そこで、家の保温性(断熱性)を向上させることがとても大切となります。

※社会課題を定量的にお伝えするために、客観的なデータとして『死亡者数』を利用させていただいたことをご理解ください。亡くなられた方には、心よりご冥福をお祈りいたします。

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