2021.08.31
環境

【コラム】世界の水不足と日本との関り②

シリーズでお伝えしている、世界の水不足と日本との関り。1回目は、世界で利用可能な水の量や、世界全体の水不足の現状について、また水不足の主な要因について紹介しました。人間が日常生活に利用できる水は、地球上の水のうち0.01%しかない、という事実や、特に中東や北アフリカの地域が現在水足に陥っていることがわかりました。

水不足の要因としては、人口増加や温暖化などが挙げられており、水不足の地域は今後ますます広範囲にわたり、かつ深刻化されることが懸念されております。
■【コラム】世界の水不足と日本との関り①

一刻も早い対策を迫られている水問題について、シリーズ第2回目は、日本がどのように世界の水不足に関わり、影響を与えているのかという視点に的を絞って考えていきたいと思います。

1.何に水を使っているのか
まず、私たちが普段生活の中で使用する水として思い浮かべるものというと、飲み水、料理や洗濯、お風呂などの生活に関わる水が一番に最初に出てくると思います。

このような用途で使用される水は、生活用水の中でも家庭用水という区分に分類されます。いざ節水に取り組もう、となったとき、まずこの家庭用水からできることを始める方が多いと思います。

そして家庭用水の他には、都市型活動用水が生活用水の中に分類されます。飲食店やホテル、プールなどで使われる水のことを差します。

その他にも工場などで使われる工業用水や、農作物を育てるための農業用水があり、私たちの生活の中の様々な分野で水が使われ、毎日の生活に深く関わっていることがわかります。

自分が直接目にして、触れて、使用したと感じている水は、実際に自分が消費している水の本の一部に過ぎないのです。

2.バーチャルウォーター
ここで、バーチャルウォーター(仮想水)という考えを紹介したいと思います。前章で、自分が消費していると感じているよりもはるかに多くの水の消費に関わっている、とお伝えしましたが、その一部を見える化したのがバーチャルウォーター(仮想水)です。

バーチャルウォーターとは、食料を輸入している国(消費国)において、もしその輸入食糧を生産するとしたら、どの程度の水が必要かを推定したものであり、ロンドン大学東洋アフリカ学科名誉教授のアンソニー・アラン氏が初めて紹介した概念です。


(出典)平成25年版 環境・循環型社会・生物多様性白書、環境省

例えば、1kgのトウモロコシを生産するには、灌漑用水として1,800リットルの水が必要です。また、牛はこうした穀物を大量に消費しながら育つため、牛肉1kgを生産するには、その約20,000倍もの水が必要です。(引用:環境省virtual water

要するに、牛肉を筆頭に大量の食物を輸入するということは、それらを生産するために使われた大量の水を輸入していることと同じなのです。同時に輸入国はその分、自国の水を消費せずに済んでいるということになります。

日本の食料自給率は40%で、残りの必要な分は輸入に頼っています。
そのため、年間800億㎥ものバーチャルウォーターを日本は輸入していることになり、この量は日本の国内の年間水使用量とほぼ同じなのです。(参考:図解でわかる14歳からの水と環境問題 株式会社太田出版)

第1シリーズでお伝えしたように、世界の水不足が深刻する中、世界の水に頼っている日本は今後影響を強く受ける可能性があります。また私たちの日々の生活が、世界の水不足で困っている地域で生活する人たちから、更に水を奪うことに繋がっていることも、知る必要があるのです。


3.ウォーターフットプリント

もう一つ、ウォーターフットプリントについてもご紹介したいと思います。ウォーターフットプリントとは、ある製品の生産や製造、加工、輸送、そして廃棄にいたるまでの全ての工程の中でどれだけの水が使用されたのかを表します。

バーチャルウォーターが食料(野菜や穀物、肉など)の栽培や生産で使用される水であるのに対し、ウォーターフットプリントは、生産はもちろん、その後の加工、消費、廃棄の流れの中で使用される水についてまでも考慮しています。

また、食料以外にも綿製品などの日用品もウォーターフットプリントで表すことができます。綿製品は、自然の河川や湖沼から引水して農業用水にあてる灌漑用水によって支えられています。

この灌漑用水は人為的な水の利用方法として、自然環境に与える影響が大きいウォーターフットプリントと言われています。(参考:WWFジャパン 日本が背化の水環境に及ぼす影響を明らかにする「ウォーターフットプリント」

日本の小売市場で売られている衣料品の約98%は海外からの輸入となっており(参考:環境省 サステナブルファッション)、私たちが毎日着ている服のほとんどが海外で生産されています。

またその材料のひとつである綿花も、もちろんですが海外で栽培されたものに頼っております。

ファストファッションの台頭で衣料品が安価で販売され、また大量に廃棄されている今、ごみ問題などはもちろんのこと、実は水不足という側面からも環境に大きな負担をかけてしまっているのです。

またもう一つ、世界の水不足に繋がっているものとして食べ物の事例を紹介します。それは、アボカドです。

アボカドといえば、ここ10数年で人気が上昇し今や外食や家庭の食卓でもよく見かける定番の食材です。アボカドは実は果物にあたり、おいしいのはもちろん、その栄養価の高さも人気の一つです。

しかし、上記の表でもわかる通り、アボカド1キログラムを生産するのにおよそ2,000リットル近くの水が必要になるのです。アボカドの標準的な重さは大体1つ200グラムだとすると、アボカド1つあたり400リットルの水が必要ということになります。

アボカドは日本での栽培が難しいため、日本で食べられているほとんどがメキシコなどから輸入されていますが、現地では毎日アボカドの栽培のために大量の水が消費されているのです。

産地のひとつであるチリのペトルカ県では、乾燥が厳しく、1ヘクタールのアボカド畑に1日あたり10万リットルの水を引かなくてはならず、今では地下の帯水層と川が枯渇してしまい、近隣の村では給水トラックに頼らざる負えない状況に陥っています。(参考:ウォーターエイド隠れた水 世界の水日報告書2019)

4.ボトルウォーターが抱える問題
次に、私たちが普段よく飲んでいるボトルウォーターが抱える問題点について紹介します。

ボトルウォーターは近年、健康ブームもあり世界各国で需要が高まっています。日本においても、スーパーや自動販売機などでボトルウォーターを目にしない日はないくらい、私たちの生活に根付いています。日本の水源からくみ上げた国産ブランドから海外ブランドの輸入品まで数多くの種類が販売されています。

その中で主流になるのが天然水です。天然水はそれぞれのメーカーが各地の水源から汲み上げて、ボトルに詰めて販売しています。しかし、無制限に水源から天然水をくみ上げることで、水源の枯渇を指摘する声が上がっています。

また、ボトルウォーター消費量世界第2位アメリカでは、国内各地の水源をめぐって、飲料メーカーと地元住民の間で訴訟騒ぎが起きているのです。地下水や湧き水など、地域の水源を企業が独占し、値段をつけて売ることへの疑問の声が上がっているのです。(参考:図解でわかる14歳からの水と環境問題 株式会社太田出版 )

5.最後に
日本で暮らす私たちの生活が、世界の水問題に大きく影響していることを知っていただけたでしょうか。
普段何気なく食べている毎日の食事や、身に着けている洋服は大量の水の消費の上に成り立っています。またその水は世界各地の水であり、中には水不足で苦しんでいる地域も含まれているのです。

困っている人たちから水を奪うことで成り立つ生活は、本来許されるべきではないですし、そもそもそのようなことに加担したくないと感じる人が大半だと思います。

ただ食料自給率が低く、さらに衣服のほとんどを輸入している日本では、世界からの輸入に一切頼らない、というのは現実的ではありません。また、世界には日本を含め海外への輸出で生計を立てている地域もあるため、直ちに輸入を無くすということが正しい訳でもありません。

そこで、私たち消費者ができることとして、買い物をするときに、手に取った商品がどこでどのように作られているのかを今一度考える習慣をつけることではないでしょうか。

そのうえで、できるだけ地産地消の商品を選んだり、生産に大量の水を使う輸入品は購入する頻度を抑えたり、衣服も過剰な購入は控えたりなど、行動していくことが大切になります。

一人ひとりの消費活動は、需要と供給に必ず影響を与えます。先ほどご紹介したアボカドは、日本で人気が急上昇したことで世界からの輸入量が増加し、生産地に影響を与えている一つの事例です。しかしその逆で、消費を減らすことで輸入量を減らしていくということも、実現できるのではないでしょうか。

まずは、日本に住む一人ひとりができることから取り組んでいき、同時に水不足で苦しむ生産地では、徐々に他の持続可能な生業を確立させていくことが重要になります。

世界の水不足を解決するための一歩として、明日から買い物をするとき、是非その商品の裏に隠れた”世界の水問題”を想像してみてください。

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